上司から仕事を追加されたら、「何を動かすか」を確認する
断るか引き受けるかの二択ではありません。予定が埋まっているなら、優先順位・期限・担当のどれを調整するかを明らかにします。
こんな思いを抱えている方へ
すでに仕事の予定が埋まっているのに、何を調整するか確認する前に上司からの追加依頼を引き受けてしまいがちな人。
この記事で考えられること
協力する意思と、今の期限で対応できる量を切り分け、期限・担当・既存の優先順位のどれを変えるか相談できるようになります。
予定は埋まっているのに、なぜ「やります」と答えてしまうのか
明日提出のレポートを、ちょうど半分ほど書き終えたところだとします。
画面にはメモが並び、ほかにも二つの仕事が待っています。そこへ上司からメッセージが届きます。
「今日の午後までに、このスライドを作れますか?」
協力したい気持ちがあれば、「はい、大丈夫です」と答えるのが一番スムーズに感じるかもしれません。
ただ、新しい仕事が増えても、使える時間まで増えるわけではありません。すでに予定が埋まっているなら、何を先にやるか、いつまでにやるか、誰がやるか、どこまでやるかのどれかを変える必要があります。
ここで大切なのは、次の二つを分けることです。
「協力したくない」と「今の期限のままでは全部を終えられない」は、同じ意味ではありません。
追加の仕事そのものは引き受けたいかもしれません。難しいのは、新しい仕事を加えたうえで、既存の約束を一つも変えないことです。
そのため、すぐに引き受けるか断るかを決めるより、まず何を調整する必要があるのかを見える形にします。
問題が仕事そのものではなく、組み合わせにあるなら
新しいスライド作成と、クライアント向けレポートの両方を今の期限までに終えるのが難しいとします。
次の二つを比べてみます。
「すみません、忙しいのでできません。」
それに対して、
「この仕事は対応できます。ただ、これとクライアント向けレポートの両方を今の期限までに終えるのは難しいです。どちらを優先しますか?」
後者では、話の焦点が変わります。
「その仕事はやりません」と言っているのではありません。
「この二つは今の条件のままでは両立しません。どちらを先にしますか」と伝えています。
この区別を考えるうえで、参考になる公的な考え方もあります。英国安全衛生庁(HSE)のManagement Standardsでは、業務量を「Demands」、要求同士の衝突を「Role」として扱っています。HSEは、業務上の要求が合意された労働時間に照らして達成可能であること、また異なる要求は可能な限り両立させ、従業員が衝突を申し出られる仕組みを設けることを示しています。これは英国の職場ストレスに関する指針であり、すべての職場や国にそのまま当てはまるルールではありません。HSE: Demands HSE: Role
ここでの実用的なポイントは、もっと単純です。二つの優先事項がぶつかったとき、その衝突を黙って二つの約束に変えないことです。
上司が判断できる形にする
衝突が見えたら、「どれだけ忙しいか」を長く説明する必要はありません。
上司が判断できる選択肢に変えます。
たとえば、タスクAの期限が水曜日で、そこへタスクBも水曜日までに頼まれたとします。
新しい仕事の期限を動かせるなら、
「対応できます。今の業務量だと金曜日なら現実的ですが、その期限で大丈夫ですか?」
新しい仕事の期限を動かせないなら、
「水曜日までにこちらを終えることはできます。ただ、その場合はタスクAを後ろにずらす必要があります。どちらを先にしますか?」
別の人に任せられる可能性があるなら、
「水曜日までに両方を終える余裕がありません。別の方にお願いするか、作業を分けることはできますか?」
新しい仕事を優先することが明確なら、
「承知しました。こちらを先に進めます。その場合、タスクAは金曜日にずれますが、その認識で合っていますか?」
これらの言い方では、「自分が十分に忙しい」と証明する必要はありません。
判断すべきことを具体的にしています。
新しい依頼があります。すでに約束している仕事もあります。両方を同じ条件のまま成立させられないなら、どこかを変える必要があります。
「忙しすぎます」とだけ伝えるより、何を決めればよいのかがはっきりします。
言い方を整えても、必ず円満に収まるとは限らない
上司が、
「まずスライドをやって。レポートは明日にずらそう」
と決めることもあります。
これなら優先順位は明確です。
一方で、追加の仕事が本当に緊急な場合もあります。顧客対応、安全上の問題、サービスや設備の障害など、予定していた仕事より先に扱う理由があることもあります。
その場合は、元の予定を守ろうとするより、新しい優先順位を確認するほうが実用的です。
「承知しました。では、こちらを先に進めます。確認ですが、今日の優先順位はレポートではなくこちら、という認識で合っていますか?」
ただし、もっと難しいケースもあります。
上司が「どちらの期限も動かせない」と言うかもしれません。ほかに担当できる人がいない場合もあります。仕事によっては、依頼そのものを断る裁量がほとんどないこともあります。
言い方を工夫しても、こうした条件が必ず解消されるわけではありません。
それでも、無理のある状況を見えないままにしないことはできます。
たとえば、
「承知しました。まずスライドを優先します。ただ、両方の期限を変えない場合、明日の朝までにレポートも完成すると約束はできません。今日の午後に進捗を共有します。」
これなら、上司が決めた優先順位は受け入れつつ、対応できる量の問題まで消えたようには扱っていません。
こうした状況が何度も続くなら、問題は一度の断り方ではなく、そもそもの業務量や優先順位の決め方にある可能性があります。どんな言い回しでも、職場の問題をすべて解決できるわけではありません。
次に使える一言
次に追加の仕事を頼まれたとき、完璧な説明を用意する必要はありません。
まずは、こう伝えられます。
「この仕事は対応できます。ただ、今の業務と合わせると、両方を今の期限までに終えることはできません。どちらを優先しますか?」
あとは実際の状況に合わせて、期限を延ばすのか、担当を変えるのか、既存の仕事を後ろにずらすのかを相談します。
目指すのは、断るのが上手くなることではありません。
両立しない約束を、同時に引き受けないことです。
予定が埋まっているところに新しい仕事が入ってきたら、最後に一つだけ確認してみます。
「何を動かしますか?」
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向いていないのは仕事そのもの? それとも今の環境?
仕事の実績を思い出せないなら、週1回だけメモを残そう