得意だからといって、その役割をもっと担いたいとは限らない
周囲から頼られる仕事を得意でも、それを今後の役割の中心にしたいとは限りません。
こんな思いを抱えている方へ
調整役を任されることが多い一方で、専門的・技術的な仕事にもっと時間を使いたい人。
この記事で考えられること
得意なことと望む役割を切り分け、今できていることの価値を否定せずに、希望する仕事の配分を説明できるようになります。
「得意だから」が、そのまま自分の役割になっていくとき
いくつかのチームが関わるプロジェクトを想像してみてください。
会議の前に進捗を集める人が必要です。あるチームが別のチームの対応待ちになっていることに気づく人も必要です。会議のあとには、翌週も同じ話を繰り返さないよう、抜けている対応をフォローする人も必要です。
あなたは、こういうことが得意です。
だから、また頼まれます。
その次も頼まれます。
数か月たつと、カレンダーには進捗会議やフォローアップの予定が並び、誰が何を待っているのかを把握しているあなたのところに、自然と連絡が集まるようになります。
その一方で、午後に進めたかった技術的な作業は、まだ画面に開いたままです。
こうなった経緯に、誰かの悪意があるとは限りません。周囲が、あなたの実際の強みに気づいただけかもしれません。
大切なのは、その次です。
「調整が得意であること」と、「これから調整の仕事をもっと増やしたいこと」は同じではありません。
前者は能力の話です。後者は、自分がこれからどんな方向へ進みたいかという話です。
得意なことが、いつの間にか役割になる
たとえば、あなたがネットワークエンジニアで、問題をわかりやすく説明するのが得意だとします。
あるプロジェクトで、エンジニア、管理側、別チームのあいだに入り、技術的な内容を整理して伝えるようになりました。話をまとめるのも上手なので、あなたが間に入るとプロジェクトが進みやすくなります。
それ自体は、価値のある仕事です。
問題は、それをやったことではありません。
昨日まで「助かった」と思われていた仕事が、自分で望むかどうかを決めないまま、その先の自分の役割になってしまうことです。
気づけば、こんな二つの午後を比べるようになるかもしれません。
午後A
- 1時間、ネットワーク設計を確認する
- 2時間、設定をテストする
- 1時間、技術的な問題を調べる
午後B
- 1時間、進捗を集める
- 1時間、会議の準備をする
- 1時間、会議に参加する
- 1時間、各チームをフォローする
どちらの仕事も、あなたはこなせるかもしれません。
でも、これから深めたいのが午後Aのような仕事なら、その希望は大切な判断材料です。
午後Bの仕事が悪いと証明しなければ、「自分はAを増やしたい」と言えないわけではありません。
「できる」と「もっとやりたい」は、別の問いです
ここで役立つのが、この切り分けです。
次の三つは、同時に成り立ちます。
得意なこと: 複数のチームをうまく連携させること。
これからも続けたいこと: 自分の技術知識が実際に役立つ調整業務。
もっと増やしたいこと: 設計、設定、テスト、技術的な問題解決。
これは、次のような両極端な考え方よりも、自分の希望を正確に表しています。
「調整業務は嫌いだ。」
あるいは、
「みんなが自分を頼っているのだから、この方向に進み続けるしかない。」
前者では、本当は持っている強みまで否定してしまうかもしれません。
後者では、強みをそのまま義務のように扱ってしまうことがあります。
考えたいのは、単純に「自分は何が得意か」ではありません。
むしろ、
「この仕事を、どのくらい今後も残したいか」
です。
たとえば、自分の技術知識があるからこそ役に立てる週1回の技術引き継ぎなら、これからも担当したいかもしれません。
一方で、日程調整、すべての進捗回収、返事が来ていない相手への催促まで、何でも自分に集まる状態は望んでいないかもしれません。
ここまで分けられると、悩みはかなり具体的になります。
「調整から逃げたい」のではありません。
自分が望む役割の中に、どの調整業務なら残したいのかを決めようとしているのです。
減らしたい仕事だけでなく、望む配分を伝える
この切り分けができると、上司との話もしやすくなります。
たとえば、次の二つを比べてみてください。
「調整業務を減らしたいです。」
そして、
「技術的な知識が役立つので、週次の技術引き継ぎはこれからも担当したいです。一方で、一般的な日程調整や進捗確認は少し減らして、その分、設計や実装に使う時間を増やしたいと考えています。」
後者なら、相手も具体的に話し合いやすくなります。
なぜこれまでその仕事を任されてきたのかを認めています。
これからも続けたい仕事も示しています。
そして、自分が今後どちらへ進みたいのかも伝わります。
形にすると、こうです。
「私は___が得意です。___にはこれからも貢献したいです。そのうえで、今後は___に使う時間を増やしたいです。」
たとえば、
「チーム間の調整は得意ですし、技術的な引き継ぎはこれからも担当したいです。そのうえで、今後はネットワーク設計や実装に使う時間を増やしたいです。」
これは、今の役割を否定する言い方ではありません。
自分が望む仕事の配分を伝えているだけです。
減らしたい仕事が、その役割に本当に必要な場合もあります
ここには一つ、大事な限界があります。
自分が別の配分を望んでいるからといって、すべての仕事を他の人へ移せるとは限りません。
上位の専門職では、他チームとの調整が役割上必要な場合があります。テクニカルリードでは、コミュニケーションや判断も役割の一部になり、手を動かす時間が減ることもあります。人数の少ないチームでは、そもそも引き継げる相手がいないかもしれません。
そんなときは、希望どおりに変えられなかったとしても、話し合う意味はあります。
次の問いが、より具体的になるからです。
この調整業務は、今のプロジェクトだけで一時的に増えているのか。それとも、自分がこれから進もうとしている役割に欠かせない仕事なのか。
一時的なものであれば、今の偏りをしばらく受け入れるという判断もできます。
一方、その役割の本質的な仕事であれば、もっと重要なことが見えてきます。
その方向に進めば進むほど、自分が減らしたいと思っている仕事も増える可能性があるということです。
だからといって、すぐに転職やキャリア変更を決める必要はありません。
ただ、「昇進すること」「専門性を高めること」「自分が望む役割」が、いつも同じ方向を向くとは限らないと気づけます。
得意なことに、進む方向まで決めさせなくていい
同じ仕事を何度も任されることは、役に立つ情報です。
そこから、
「自分はここで貢献できる」
とは言えます。
でも、それだけで、
「これからの仕事人生でも、この仕事をもっと増やしたい」
と決まるわけではありません。
前者を認めながら、後者は自分で選べます。
次に役割について話す機会があるなら、まずはこの一文だけ埋めてみると、考えを整理しやすくなります。
私は___が得意です。___はこれからも続けたいです。そして、___に使う時間をもっと増やしたいです。
得意なことを否定する必要はありません。
必要なのは、その強みをこれからの自分の役割にどう組み込みたいのか、少し具体的にすることです。
「やりたいことがない」のではなく、興味を早く切り捨てすぎていませんか?
その仕事をしたいですか? それとも、「その仕事をしている自分」が好きですか?
人の希望はわかるのに、自分が何をしたいかわからないとき